弁護士しだらの執務室
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弁護士の本棚 > 0001 離婚の相談をする前に準備すべきこと
「離婚のことで悩んでいるが、どのようにしたら解決できるのか全く分からない。」「弁護士に離婚の相談をしたいが、具体的にどのようなことを説明したり、どのような点についてアドバイスを受けたらよいのか分からない。」「何十年もの間の出来事について、30分や1時間で要領よく説明できるのだろうか。」 このページでは、弁護士しだらが公設相談所で相談を受ける機会の多い「離婚」に関する相談について、「相談者の方が、こういうふうに準備してくだされば、より充実した相談ができるのに」と思っていることを記していきます。 |
離婚の悩みは、身近な人に気軽に相談できず、一人で抱えてしまいがちな問題です。離婚を考える(あるいは考えさせられる)までには、夫婦間にさまざまな出来事があり、それらが複雑に絡み合い、「感情の疲労」が蓄積した状態になっていることも多いと思われます。弁護士しだらに離婚の相談をされる方には、相談を始めた途端、次々と思い出すままに今までの出来事を話し続けて止まらない方がいらっしゃいますが、上記のような相談者の方の置かれた立場を考えると、ある程度はやむを得ないのでしょう。
他方で、弁護士は、(普通は)相談者の方に初めて会う者であり、相談者自身や配偶者のことについて、何も知らない状態から話をお聞きしています。これまでの出来事を整理もせず、思いつくままに話をして窮状を訴えるだけでは、すぐに弁護士に事情を理解させることは難しいと思われます。また、弁護士は、相談者の方のお話になる諸事情等に照らして、離婚問題が「法律的に」うまく解決できるかという視点からお話をお聞きしていますので、法律的判断に余り関係ないと思われる事情を延々と訴えても、アドバイスを受けるためには余り意味がないということもあり得ます。
弁護士に離婚の相談をするということは、離婚問題について法律家としてのアドバイスを求めるということです。相談者としては、離婚相談に臨む前に、弁護士の法的判断を求めるためにどのような事情を説明するべきなのかを理解し、説明のための準備をしておくべきことがとても有用です。そこで、このページでは、弁護士しだらが常々思っている相談者の方が「離婚の相談をする前に準備すべきこと」をご紹介いたします。
ところで、離婚の相談において弁護士が法律家としてのアドバイスをする対象は、
@ 法的手段をとれば、相手方の意向にかかわらず、離婚することができるのか(あるいは離婚させられてしまうのか)という「離婚原因」の問題 A 夫婦間に未成年の子がいる場合に、相談者が子の「親権者」になれるのかという問題と、これと関連した「養育費」、「面接交渉」の問題 B 離婚に伴う「財産分与」の問題 C 相手方に対して、離婚に伴う「慰謝料」が請求できるかという問題
が中心となります(ほかにも、離婚が成立するまでの「婚姻費用」の問題等があります)。
以下では、これらの問題につき、相談者の方が準備すべきこと(説明すべき内容と持ってくるべき資料)を、順にまとめていきます。メモでも構わないので、自分で紙に書き出したものをお持ちいただくことが望ましいといえます。
離婚の悩みを弁護士に相談する場合に、相談者が一番関心をもつのは、法的手段をとった場合(あるいは相手方が法的手段をとった場合)、果たして、夫婦の合意がなくても、離婚することができるのか(あるいは離婚させられてしまうのか)という点です。これは、法律が定めている「不貞行為」「悪意の遺棄」「婚姻を継続し難い重大な事由」などの離婚原因と呼ばれる事実の有無(及びその立証の可否)の問題であり、弁護士は、その点を常に意識しながら話をお聞きし、質問をします。離婚原因の有無を判断するためには、前提として、これまでの夫婦の生活史全般についても広範囲に事情をお尋ねする必要があります。これらに関し、相談者が事前に準備すべきと思われることは次表のとおりです。もちろん、これらのすべてが分からなければ相談できないわけではありませんし、他に重要だと思う事柄があれば独自に工夫して準備することも有用です。
説明すべき内容 | 説明すべき内容の詳細 | 持ってくるべき資料 |
基本となる生活環境、夫婦の生活史など | 家族(相談者、配偶者、子、孫)、親族(相談者及び配偶者の両親、兄弟等)、その他の関係者の氏名、生年月日(または年齢)、相談者との続柄、住所、誰と誰が同居(あるいは別居)しているか、職業、連絡先電話番号 *身分関係を示す「図」を作成すると分かりやすくなります。 |
戸籍謄本、住民票(または外国人登録事項証明書)など |
相談者及び配偶者の出身地、学歴、保有資格、過去の職歴、過去の結婚歴及び離婚歴(他の異性との間の子の有無を含む。)、病歴、現在の健康状況、趣味、特技、性格、飲酒やタバコの嗜好、犯歴、破産歴など *時期が特定できるものは、できるだけ時期も整理してくださると分かりやすくなります。 |
履歴書(過去のものがあれば)、健康診断の結果票など | |
配偶者と出会った時期、出合った経緯(見合いか恋愛か等)、交際中の状況、同居開始時期、結婚式の日、婚姻届出日 | - | |
現在の住居の間取 | 間取図(手書きでも結構です。) | |
結婚後に引越したことがある場合、居住場所及びその時期 | 戸籍の付票 | |
配偶者と別居した時期の有無、あればその時期及び回数、別居者の居住場所 | 戸籍の付票 | |
相談者及び配偶者の平日及び休日の平均的な生活スケジュール | 普段使っている手帳など | |
家庭生活や社会生活における主な出来事 | 家族のアルバム、ビデオなど | |
相談者及び配偶者の勤務先、勤務時間及び仕事の内容、収入状況(月収及び年収) | 給与明細、源泉徴収票、確定申告書 | |
公的扶助等の受給の有無 | 生活保護受給証明書、年金証書等 | |
毎月の家計の収支の状況(収入に対する毎月の具体的な支出:住居費、教育費、医療費、その他) | 預金通帳、家計簿など | |
家計の管理の方法(例えば、夫の給与振込口座は相談者が管理していて、夫には小遣いを毎月3万円渡している等)、別居している場合は生活費の受け渡しの状況 | - | |
離婚原因 | 配偶者の不貞行為の相手方の氏名、生年月日(または年齢)、住所、職業、配偶者との関係、不貞行為の時期及び内容、不貞行為があると考える理由、配偶者の弁解状況 | 写真、録音テープ、手紙、メール、調査会社の報告書 |
配偶者が相談者を遺棄(家族を捨て、かえりみない)した時期及びその理由 | - | |
配偶者による暴力、暴言の時期及びその具体的内容 | 写真、診断書 | |
その他、離婚したいと考えるようになった理由(性格があわない、酒を飲みすぎる、性的不調和、浪費、異常性格、病気(心因的なものを含む。)、精神的に虐待する、家族と折り合いが悪い、同居に応じない、生活費を渡さないなど) *夫婦関係が悪化していった経緯を年表のように時間順で整理すると分かりやすいです。 |
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その他 | 離婚または夫婦円満の調停を経ている場合、調停の経過 | 調停調書(不成立)、調停の呼出状 |
配偶者が離婚についてどのように考えていると思われるか、また配偶者が相談者についてどのように思っているか(どのような点に不満をもっていると予想されるか)など | - |
相談者と配偶者の間に未成年の子がいる場合、離婚にあたり、夫婦のいずれかが子の親権者となります。法的手段をとった場合、裁判所は「子の福祉」の視点から、夫婦のどちらが親権者として「より適切か」を判断することになります。自分が親権者になれるかについて弁護士のアドバイスを求める場合、子を自分の手元で育てたいという気持ちを訴えるだけではなく、次表のような事情を整理し、ご自身でも冷静に分析しておくことが有用です。
説明すべき内容 | 説明すべき内容の詳細 | 持ってくるべき資料 |
子の生活状況 | 子の生活歴及び監護状況(監護補助態勢を含む。) | - |
子の発育状況及び健康状況 | 母子健康手帳など | |
子の通う保育園、幼稚園、小学校、中学校、高校、大学等の名称、所在地、連絡先及び連絡担当者の氏名 | - | |
子の保育園、幼稚園、小学校、中学校、高校、大学等への出欠状況 | 幼稚園及び保育園の連絡帳、通知票など | |
紛争に対する子の認識の程度、子の意見 | - | |
配偶者と別居している場合、養育費の受領状況、子と親との交流の状況 | 預金通帳など | |
子の監護方針 | 今後の監護方針 | - |
親権者となった場合の子の監護環境(監護補助者の有無を含む。) | - | |
親権者となった場合の元配偶者と子との交流についての意向 | - | |
*「2 離婚原因について」に記載した事項も、親権者の指定、養育費、面接交渉に関係がある部分がありますので、必ず整理してください。 |
相談者と配偶者が婚姻期間中に協力して形成した財産については、離婚にあたり、財産分与をして清算する必要があります。例えば、夫が会社員、妻が専業主婦として夫婦生活を営むなかで、夫名義の預金が形成された場合、妻は夫に対し、離婚にあたってその夫名義の預金の分与を求めることになります。財産分与に関して弁護士のアドバイスを得るためには、相談者は、夫婦双方の財産状況を説明する必要があります。整理すると次表のとおりとなります。
説明すべき内容 | 説明すべき内容の詳細 | 持ってくるべき資料 |
相談者及び配偶者が有する右記の財産 | 預金、現金 | 預金通帳など |
社内積立、財形貯蓄 | 証書など | |
生命保険、その他の保険 | 保険証書など | |
株式、ゴルフ会員権、その他の有価証券及び金融商品 | 株券、証券会社の証明書など | |
貴金属、美術品、その他の高価品 | 証書など | |
自動車、オートバイ | 車検証など | |
不動産(土地、建物、マンション) | 登記簿謄本、不動産会社の査定書 | |
退職金(予測されるもの) | - | |
年金(予測されるもの) | - | |
その他の財産 | - | |
負債があればその内容(特に住宅ローン) | ローンの明細書など |
配偶者に主たる原因があって離婚に至る場合、相談者が受けた精神的ショックを慰謝するための慰謝料を求めることができる場合があります。弁護士に「慰謝料をどのくらいもらえるのか」を尋ねたい場合に準備しておくべき事柄は、「2 離婚原因について」と基本的に同じです。メモでも結構ですので、どのようなことがあったか、時期を含めてできるだけ具体的に整理しておくことが、アドバイスを得るためには極めて有用です。
離婚の悩みは多くの人が直面する問題ですので、一般の方にも分かりやすい「離婚の本」がたくさん出版されています。書店で分かりやすそうな本を一冊入手し、よく読んで一般的な知識を得てから弁護士の相談を受けると、充実した相談を受けられると思います。是非、ご自身でも積極的に勉強なさることをお勧めします。
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